オススメはんだごてと、はんだ付け環境の話

ここでは、私が一般的な電子工作向けにおすすめするはんだごての紹介と、その理由についてお話します。

 

まず始めに……

「はんだ付けってむずかしい、失敗する、うまくきれいにできない」という人にお伝えしたいことがあります。それは技術の問題ではなく、道具のせいです。大事なことは以下のサイトに詳しくまとめられているので、ご覧ください。

 

https://godhanda.co.jp/blog/kisokouza07/

 

ここで説明したいことを一言でまとめると、「はんだごての最初の一本目は、セラミックヒーター式サーモスタット付きはんだごてを買いましょう」ということです。「高い方を買え!」みたいな話をすると、なんだ回し者か? とも思われるかもしれませんが……ニクロム式のこてはやめて、サーモスタットがついたセラミックヒーター式のはんだごてを使った方がよいというのは、断言できます。

 

新旧はんだごてをざっくりと比較すると

簡単にまとめると、古いニクロムヒーター式のはんだごては……

というものであり、上手なはんだ付けができなくて当たり前の道具です。(市販の商品をやたらとDisるのはあまり行儀良くないと私も思いますが……事実、実験室や準備室にある旧式はんだごては、みんなこて先が真っ黒焦げになって、うち捨てられているでしょう?)

 

一方で最近の、サーモスタットがついたセラミックヒーター式のはんだごては……

上記のように、職人芸を身につけた一部の人しかまともに使えなかったものが、誰でも上手に使える道具に大きく進化しています。私も、旧式のこてでは、新型のこてと同じ質のはんだ付けは絶対にできません。

 

おすすめのはんだごて

さて、ではどれを用意すればいいのか。特にオススメは

です。迷ったらこれでいいと思います。温度調節ボリュームを手で回せることが特徴で、使わないときはダイヤルを回して低い温度に設定しておくことができます。200℃でスタンバイさせておいて、使用時に320℃や370℃に上げるようにすれば、こて先の劣化を最小限にして、ストレスなく作業が可能です。

 

次点では、以下のものがオススメできます。

PX-201は温度調節式ですが、温度調節ボリュームを回すのにマイナスドライバーが必要です。作業机にドライバーがあってすぐ使える環境ならばこちらでもいいと思います。250℃でスタンバイし、350℃で作業しましょう。350℃固定式のPX-335も、温度を下げておくことはできませんが、必要以上に高温にならず温度を維持してくれるので、作業性はよさそうです。最近出たHAKKOのDASH(型番FX-650-8X)は、実売1200円前後と安価で、ニクロム式より温度の立ち上がりはよいのですが……それでも15Wと非力であり、サーモスタットも無いためおすすめできません。

 

もっと高価なステーション型もあるけれど……

さて、高いほうがよいのなら、これまでに紹介したような、回路が手元に内蔵されている(手元内蔵式と呼ぶことにしましょう)温調はんだごてより、さらに高価なステーション型のはんだごてを使った方がよいのか、という話ですが、これは必ずしも必要ではありません。手元内蔵式温調ごてに対してステーション型が優位である点を列挙します。

しかし、最近の手元内蔵式はとてもよくできています。熱容量も十分大きいし、熱回復も十分に早いし、こて本体も十分軽量です。ステーション型でないと困る!……ということは、まずありません。私もステーション型のはんだごてを一台所有し使用していますが、一般的な電子工作用途であれば、手元内蔵式のはんだごてを使ってステーション型と同程度の質ではんだ付けをすることができると思います。

大学などの設備更新で除却されたお下がりをもらう機会があったり、オークションサイトで安価に購入できそうな場合には、ステーション型でもよいと思います。そのような場合、もちろん動作の保証は無いので、ご注意ください。

 

一緒に必要な、最低限の道具について

はんだ付けに必要な道具については、以下のページが参考になります。

https://handa-craft.hakko.com/support/index.html

ところで、温調はんだごてを用意したなら、それに付随して揃えるものについて注意すべきことがあります。

まず、温調であるなしに関わらずこて台は必ず一緒に用意しなくてはいけません。こて台にはこて先クリーナーがついていると思いますが、温調ごてを使う場合はスポンジ式ではなくワイヤー式のクリーナーを用意するとよいです。温調はんだごては温度を一定に保つことができるので、濡らしたスポンジはもはや不要。クリーニングワイヤーに数回ザクザクとこて先を刺すだけで、手軽に、かつ温度を下げることなく小手先をきれいにできます。

はんだは、直径0.8〜1.0mmのヤニ入りはんだを用意しましょう。ヤニ入りはんだは、はんだ線の中にフラックスが充填されています。このフラックスが無いと、溶けたはんだはうまく流れず、きれいなはんだ付けができません。ヤニなしの線はんだは、主に金属を接合するのに使われるもので、使う際には別に金属用のフラックスを用意するものです。電子工作用のものではありません。

リワーク(修正や修理、洗浄のため、一度取ってつけ直す)の際には、はんだ吸い取り線が必要になります。用意していないと、間違えてはんだ付けした際に修正ができないので、必ず用意しましょう。はんだを除去したい部分の上に吸い取り線を乗せ、その上からこてで温めると、はんだが吸い取られていきます。つけたはんだを取るものには、吸い取り線と吸い取り器の2つがあります。吸い取り器は特に多くのはんだを取り去る場合に有効ですが、無くても吸い取り線で代用できます。逆に吸い取り器だけで吸い取り線の代用にはならないので、注意しましょう。

 

こて先(チップ)変更のススメ

さて、環境は確かにこれで十分なのですが、さらにひと工夫……目的に合わせた形状のこて先に付け替えることで、より速やかに、質の良いはんだ付けが可能になります。

こて先の種類と使い方、選定などについては、HAKKOのWebサイトに詳しい話があります。

https://www.hakko.com/japan/support/maintenance/detail.php?seq=71

 一般的なはんだごてについているこて先は、いわゆる「丸くなった鉛筆の先のような形」のB型と呼ばれるものです。このこて先には向きがなく、初めて触る人でも扱いやすいという特徴があります。一方で、「器用貧乏」「だいたいのものに点接触しかできない」という欠点があります。そもそもはんだ付けは、はんだごてから対象物へ熱を伝える必要がありますから、点より線、線より面で接触するほうが効率が良いのは、当然のことです。

いろいろ試して自分の使いやすいものを見つけること、用途別に複数のチップを用意するのが最終的には望ましいのですが、私が電子工作向けにまずオススメするこて先は、2Cと呼ばれるタイプです。一般的なユニバーサル基板やプリント基板のスルホール実装をやるとして、1Cでは先端が小さすぎて加熱しづらく、3Cは大きすぎて基板を痛めたりブリッジの原因になり得ます。私が普段使いするはんだごてにも、2Cのチップがつけっぱなしになっています。

最初は慣れるまで少し落ち着かないかもしれませんが、すぐ慣れます。そして慣れるとB型には戻れなくなります。

 

 

おすすめのはんだ付け機材

 その他、私が実際に使用しているはんだ付け機材を列挙しました。点数がだいぶ多いが、ちょいちょい電子工作をやる人なら、半年から1年程度で多かれ少なかれ全ての機器に触れることになるはずのものばかりです。私が実際に使っていて、これはちゃんと使えることが分かっているというものだけ紹介します。(私が知らないだけで、他にも使える製品があると思います。)Amazonと秋月電子通商の通販ページへのリンクをつけました。秋月のURLの後ろにあるカッコ付きのコードは、秋月電子で使われている通販コードです。店頭で店員さんに在庫を聞くとき、商品名と合わせて通販コードを伝えると間違いがないので便利です。

 

 

 

 

 

 

さいごに

 gootさんやHAKKOさんの企業努力により、きちんと道具を選んで適切に使う知識さえあれば、特別な技術がなくとも十分な品質のはんだ付けが、誰でもできる時代になったように思います。「電気回路に興味はあるけどはんだ付けが難しいから……」というかつてのイメージが残っていて、それが障壁になっているのであれば、今一度試しにやってみてはいかがでしょうか。

 

※ まだ、いくらか書きかけの部分があります。画像や文章を加筆する予定です。

※ 続けて、ミノムシクリップとビニル電線を使ってコードを作る説明を書こうと思っています。他にリクエストがあれば、こっそりメールなどで教えてください。